世間一般の落語のイメージといえば、笑点くらいしかないだろうというのが僕の見解。私見ですが。
そんな僕もご多分にもれず、笑点メンバーの他には立川談志とかくらいしか名前が上がらないところです。これが上方落語なんかになったら、関西の人はもうちょっと知ってるのだろうかとは思うところですが。
そんな感じで、せっかく東京にいるにもかかわらず、寄席なんかには一度も行ったことがないという話。でもたまにテレビでやっている落語を聞いているのはすごい楽しいわけで、やっぱり一度行かなくてはなあと思うのが偽らざる心情。なかなか機会がないけれど。
尾瀬あきら 『どうらく息子』
雲田はるこ 『昭和元禄落語心中』
そんなこんなで落語漫画というものを読んでみました。
前者の『どうらく息子』は、ビックコミックオリジナル連載中で、現在2巻まで発売中。一方『昭和元禄落語心中』の方は、講談社の季刊ITANで連載中で、今月7日に発売。
2作品共に落語を扱っており、師匠の落語に感動し弟子入り志願をした主人公を中心に進むストーリを基調としながらも、いわゆる”青年雑誌”に連載されている『どうらく息子』は、落語界を主人公の目線で見つめる「職業モノ」的な側面をもち、一方『落語心中』の方は、弟子と師匠の他に、師匠の兄弟弟子だった男(故人)の娘を加えた3人それぞれの動きを俯瞰的に描く手法をとっており、全く読み味の違う作品になっている。
『どうらく息子』の面白みはやはり職業モノ定番の主人公の成長をじっくりと描く部分と、主人公が足を踏み入れた「落語」の世界を、その裏側から開示してくれる裏話モノ的な、読者が新しい知識を手に入れることができる快感にあるのだと思う。(監修しているのは現役の落語家)いわば、「大事なことは全て漫画で教わった」を地で行くうんちく漫画的な楽しみ方もできる、何度か読み返したくなる知識欲を刺激してくれる作品。
他方、『落語心中』は、「落語」を背景にした情念漫画、とも呼べるモノ。主役級3名がそれぞれに落語に向き合う姿勢を、弟子はその天然無心な行動で、師匠は内に秘めた想いで、兄弟弟子の娘は落語の世界と自分とのギャップの苦悩の中で表現しています。後半、それぞれの主人公達の想いを理解した際に再度読み返すことで、それぞれのセリフの裏側をうかがい知ることも出来る作品です。
同じ題材、同じ起点でも、全く違う二種類の漫画が出来上がるところに、相変わらず漫画の面白さと、漫画家のテクニックを感じることのできる2作品です。