【読見】中央モノローグ線

小坂俊史 『中央モノローグ線』

 京王線沿線から離れられない僕が言うのもなんだが、やはり、中央線にはそこを離れがたい匂いがあるのかな、と思える作品。
 中央線快速、特に新宿〜三鷹間にあるある種のモラトリアム。かぐや姫の「神田川」だったり(じつは神田川の舞台は中野じゃなく新宿区早稲田という話)、THE BOOMの「中央線」だったりと、日々の暮らしに忘れてしまった何でもない日常を思い出させてくれる響き。
 もっとも、思い出すだけで、結局のところ、今ある暮らしを必死に生きるしかない僕らは、決してそのモラトリアムを表に出したり主張したりしない。
 だからこその、モノローグ。